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ETV特集「カズオ・イシグロをさがして」

長崎生まれ、海洋学者の父に連れられて5歳で渡英し、もっとも有名な「英語で書く日本人作家」となったカズオ・イシグロ。英文学ファンにとっては既におなじみの存在でしたが、映画『わたしを離さないで』の公開で、より広く知られるようになったのではないで…

『欲望という名の電車』

翻訳劇の名作を松尾スズキの演出で。主演のブランチは秋山菜津子さん。ところどころ杉村春子に影響されているのかな、と感じる場面もあった。ブランチは歌舞伎でいうなら「立女形」の格にあたる役なのだろう。女の心をもった男、として演じるほうがハマる………

「余命反展」

三鷹の天命反転住宅へ。滝本誠さんご所蔵のリンチ作品を拝見してきました。のんびりとした午後、noirな濃いコーヒーをいただきながら……。噂どおりの不思議な空間だった。洋書大放出コーナーでマキューアン『セメント・ガーデン』を掘り出す(著者近影が男前…

「橋本平八と北園克衛展」

世田谷美術館へ。ガラガラにすいていたけど、とてもいい展示だった。兄の橋本平八は彫刻家で、30代で夭折している。神仙に材をとった素朴さの漂う木彫は、今見ても全然古びていない。フォークロアぽいのに現代的でもあり、シュールレアリズムに片足踏み入れ…

「香水瓶の世界」展

午後から庭園美術館へ。香水瓶の展覧会を見に行ってきました。最終日だったせいか、けっこう混み合っていた。あれれ? 何だか体調よくないなー、と思っていたら、不覚にも貧血におそわれて途中で倒れてしまいました。とほほ。ルネ・ラリックとか、20世紀初め…

錦秋文楽公演

お昼の新幹線で大阪へ。文楽を、はじめて国立文楽劇場で拝見。広い!と驚く。客席もゆったり。国立小劇場だとたいてい満席で、人いきれで蒸し暑く、息づまるような濃密な文楽ワールドが繰り広げられるのでしたが……。本場だったはずの大阪では空席もめだち、…

ムロジェックの「タンゴ」

ポーランドの60年代の戯曲。演出は長塚圭史。ゴツゴツした男性的な訳語が飛びかうので、新鮮に感じた。米川和夫と工藤幸雄の共訳。(たしかに米川訳の主人公は「ぼく」より断然「おれ」が似合いそう……)観念的なせりふをナマのままぶつけあう、難解な芝居で…

ビントレーのペンギン・カフェ

初台のオペラシティにバレエを見に行く。ホワイエにワインとか西洋菓子の屋台(とは呼ばないと思うけど)が出ていて、ちょっとした縁日のようでした(笑)。 フォーキン振付の「火の鳥」は、バレエ・リュスの代表的なレパートリー。古典バレエのおとぎ話っぽ…

森の薪能

新宿御苑の薪能を見に行ってきた。狂言は「清水」。滑稽さと温かみが感じられ、とても面白かった。能は「紅葉狩」。華やかで見映えのする舞台で、歌舞伎とも見比べつつ、人と鬼、男と女、権力者側とアウトサイダーなどについて、ぼんやり考えながら観ていた…

「ハーバード白熱教室」in Japan

東京大学・安田講堂で開催された「ハーバード白熱教室 in Japan」の放映を観ました。2コマの講義で、前半はイチローとオバマの年俸格差や裏口入学について、後半は世代を越えて戦争責任は継続するか?という話題を軸に、参加者のあいだで熱い論議が交わされ…

初めての薪能

ご近所の薪能を見に行ってきました(自転車で)。野外公演は初体験! 宵空に舞う火の粉が幻想的でした。狂言はユーモラスな鬼が登場する演目。ほのぼのとして、けっこう笑えた。能は修羅物ではなく、憑物能という珍しいジャンル。巫女に神様が取り憑き、ひら…

「ロックンロール」再見

2回目の観劇。初見ではストーリーを追うので精一杯だったけど、今回は余裕をもって楽しめた。あらためて戯曲のすばらしさに唸りました。それぞれの人物がたどる「運命」を知ってから見ると、各シーンに込められた意味合いが鮮やかになり、いっそう切なく感じ…

ハーバード白熱教室

http://www.nhk.or.jp/harvard/ BSの再放送で、マイケル・サンデル教授の政治哲学講義を観てみました。カントの辺りから難しくなって、たまに記憶が飛んでたけど……。実際の事例をあげつつ、対話形式で「善とは?」「正義とは?」という根元的な問題を考えて…

「ロックンロール」

トム・ストッパード作、栗山民也演出。チェコスロヴァキアの現代史に翻弄された青年の半生と、英国の共産主義者である教授一家との心の交流を、ロックの名曲にのせて描いた傑作でした。小気味よいセリフの応酬、テンポのよい場面転換など、ストッパードの洒…

ドラマ「ハゲタカ」再見(6)

第6話「新しきバイアウト」 ホライズン本社からは解雇され、ピストル誤射で足に重傷を負い、すべてを失った鷲津が再起をかけて、いよいよ芝野とタッグを組むことに! わー、盛りあがる展開だなあ。ふたりはホライズンの狙うレンズ部門を守るため、エンプロイ…

ドラマ「ハゲタカ」再見(5)

第5話「ホワイトナイト」 電機メーカーの経営権をめぐるTOB合戦。メディアへの露出を増やして世論をあおり、「虚業」と侮られながらも、あっけらかんと拝金主義をつらぬく若手社長・西野の姿は、ライブドア事件を連想させる。彼の真の狙いはどこにあるのか。…

ドラマ「ハゲタカ」再見(4)

第4話「激震!株主総会」 前話から3年たち、次のターゲットは、戦後の製造業の浮き沈みを絵に描いたような、巨額の赤字にあえぐ電機メーカー(赤字が800億ってすごい)。菅原文太が、末期ガンの創業者社長を好演。この渋ーい存在感がよいですな。一方、アメ…

ドラマ「ハゲタカ」再見(3)

第3話「終わりなき入札」 会社再建のためのスポンサー枠を取り合う入札合戦。銀行vs外資の、わかりやすい図式で、刻々とアップしていく入札額が緊張感をあおる。水面下では新社長の横領疑惑をめぐり、テレビ記者の三島が裏をとるために奔走する。深夜ニュー…

ドラマ「ハゲタカ」再見(2)

第2話「ゴールデン・パラシュート」 会社を私物化してる女社長に冨士眞奈美。すばらしい配役。まるで「吉兆」がらみの実際の事件をほうふつとさせる展開で、いかにもありそうな同族経営の企業が槍玉にあがる。いつもクールぶってる鷲津が、途中ちょっと声を…

ドラマ「ハゲタカ」再見(1)

暑い夏にぴったりなドラマ。何話か見そびれていたこともあり、再放送で楽しみに観ています。ハゲタカ DVD-BOX出版社/メーカー: ポニーキャニオン発売日: 2007/07/18メディア: DVD購入: 10人 クリック: 161回この商品を含むブログ (212件) を見る第1話「日本…

「空白に落ちた男」

PARCO劇場にて。'08年に評判になった舞台の再演。せりふはなく、ダンスとマイムを組み合わせた刺激的な演出で、小粋な音楽はアコーディオン奏者のcobaが担当、舞台美術にも仕掛けがたっぷりと、うわさどおり観ていてすっごく楽しい舞台でした。図書室のシー…

「ファウストの悲劇」

シアターコクーンにて観劇。いかにも翻訳劇ぽいセリフに、ところどころ狂言や世話物ふうの味付けがしてあった。16世紀に成立した英国の古典劇だそう。ゲーテのファウストと大枠は一緒だけど、設定が微妙に違ってる。若返りや恋愛は出てこない。教会や騎士国…

團菊祭五月大歌舞伎

松竹座で昼の部を観劇。一階席に座るのは初めて。舞台が近くて見やすかった! 菊之助の玉手御前は初役だそう。前半、ほとんど人形振りに見えるくらいメリハリのきいた所作。気合い充分で面白かった。衣装は珍しくて、襦袢の片袖がかなり長く見えてる。着物も…

世界ウルルン滞在記・阿部サダヲ編

世界ウルルン滞在記 Vol.7 阿部サダヲ [DVD]出版社/メーカー: 東宝発売日: 2009/11/20メディア: DVD購入: 7人 クリック: 93回この商品を含むブログ (5件) を見る阿部サダヲがプラハで人形アニメーション制作に挑戦する回。DVD化されてたので、あらためて見て…

三月大歌舞伎

今月なぜか三部制の歌舞伎座。この建物ももう残り二ヶ月とあって、場内はごった返していた。改築騒動には、はっきり言ってうんざり……。こういう「商売」のやり方を続けてたら、昔ながらのファンは離れていくんじゃないか?とさえ思う。 愚痴はおいといて、め…

ドラマ『左目探偵EYE』

左目探偵EYE (ドラマスペシャル) [DVD]出版社/メーカー: バップ発売日: 2010/03/17メディア: DVD購入: 5人 クリック: 156回この商品を含むブログ (7件) を見る今週で完結。途中何話か見忘れたけど、脇のキャスティングが良くてけっこう面白く見てた。脚本が…

国立能楽堂・三月普及公演

馬場あき子さんによる解説がとても面白くわかりやすかった。『玉葉』の記事についてなど。頼政は気障な男だったらしい。武家は「家」を存続させるために、戦争では必ず両方の陣営に人を配しておく、という話なども考えさせられた。頼政の自滅的な死は単なる…

パリ・オペラ座「バレエ・リュス」ガラ

昨年12月の公演。テレビで放映しておくれーーーと、日本の片隅から念じていたら、NHK教育の「芸術劇場」でやってくれました。嬉しかった。 「バラの精」はフォーキン振り付け。音楽はチェロの独奏からはじまる。バラの精がすごく色っぽくて、こんなに豊潤な…

二月文楽公演『大経寺昔暦』

近松原作の「おさん茂平衛」、はじめて見ました! 映画の『近松物語』の元ネタ。映画だと後半を『冥途の飛脚』の「新口村」とくっつけてあるんだけど、今回その理由がわかった。……だって後半、いまいちなんだもん。たしかに本文は名調子と思うけど、岡崎の在…

二月大歌舞伎

夜の部を幕見で拝見。「壺坂霊験記」は前半がとにかく暗くて長い。現代人じゃもうこの 遅 い 進み方には耐えられんーーと思ったほど。昔は夫婦の情愛とか、座頭の仕草とかが見所だったのでしょうか。歌舞伎座の舞台が広すぎて空間が余ってしまう。でも後半、…