チェロ弓の毛替え

先日、渋谷の楽器店で毛替えをお願いしてきた。都内には弦楽器の有名店がいろいろあるけど、アマチュアにとって敷居が高いというか、はっきりいって接客に難がある……。いつもイヤーな気持ちですごすご帰ってくることが多かった。やっと、親切な対応でフツー…

神童が世に出るとき

日本音楽コンクールのチェロ部門本選に誘ってもらい、迷ったすえ思いきって行ってきました。なかなか一般人には聴く機会もないものだし……。チェロ部門は、3年に1回しか開催されないとのこと。以前に八王子のカサド・コンクールをのぞきに行ったことがあるけ…

横浜トリエンナーレ 2011

現代アートの国際展、今年で10年めを迎える横浜トリエンナーレに、はじめて行ってみました。以前は、現代アートに対して「たいくつー」「意味わかんない」的なイメージしか持っていなかった……。でも、旅先で訪ねたビルバオのグッゲンハイム美術館や、金沢21…

『サヴァイヴィング・ライフ』

ヤン・シュヴァンクマイエル監督の新作は、シュールな切り絵アニメ(ときどき実写)で、夢の世界と現実を行き来する主人公の奇妙な「自分探し」がテーマになっている。ストーリーらしきものがあり、きちんと謎解きが進んでいくので、この監督の作品のなかで…

メルニコフのショスタコーヴィチ

ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ Op.8、クリスティアン・ルブレ制作によるメルニコフとシュタイアーのインタビュー (ボーナス特典映像) [2CD + Bonus DVD] [輸入盤・日本語解説書付]アーティスト: アレクサンドル・メルニコフ,ショスタコーヴィチ,ア…

難民という生き方

メカスの難民日記作者: ジョナス・メカス,飯村昭子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2011/06/22メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見るリトアニア出身の映画作家ジョナス・メカスによる青年時代の日記。とても面白かった。『ど…

『この世の涯てまで、よろしく』

この世の涯てまで、よろしく作者: フレドゥン・キアンプール,酒寄進一出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/05/11メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (14件) を見るふと気づいたら、生き返ってカフェに座っていたアルトゥア……

『囁きと密告』

囁きと密告 ─ スターリン時代の家族の歴史(上)作者: オーランドーファイジズ,染谷徹出版社/メーカー: 白水社発売日: 2011/04/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る囁きと密告 ─ スターリン時代の家族の歴史(下)作者: オーランドーファイ…

星新一と安部公房

星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)作者: 最相葉月出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/03/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 46回この商品を含むブログ (40件) を見る星新一〈下〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)作者: 最相葉月出版社…

『エッセンシャル・キリング』

ポーランドの鬼才、イエジー・スコリモフスキ監督の最新作。荒漠とした谷間で3人のアメリカ兵を殺し、捕虜となったイスラム系の男が、移送中に雪山で事故にあい、からくも脱出。生き延びるためにひたすら逃げる、逃げる……。人間の業の深さや、飢えとの闘いな…

カレル・ゼマン展

渋谷の松濤美術館へ。チェコアニメの巨匠、カレル・ゼマンの原画や絵コンテの展示を見てきました。かなり特撮に熱意を傾けていた監督だったようで。「悪魔の発明」とか「旧世紀探検」の書き割り、綿密ですごい。やっぱチェコ人って、コラージュ技法とかデザ…

「視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション」展

葉山の近代美術館へ。モホイ=ナジはハンガリー出身、バウハウスの教師として活躍し、やがてアメリカに渡った。絵画や写真、グラフィックデザインなど、どれもが実験的で前衛ぽい作風。色彩は暗く、画面構成も無機的で、2つの大戦に挟まれた時代の閉塞感が伝…

『ダンシング・チャップリン』

周防正行監督の新作。映画に触発されてローラン・プティが振り付けた作品を、ふたたび映画にする、という粋な企画。前半のドキュメンタリー部分が面白かった。後半はわりと舞台に忠実な映像化なのだけど、屋外に飛び出して撮影してあるパートは、やはり映画…

「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」写真展

恵比寿の写真美術館にて。チェコスロヴァキア出身の写真家・クーデルカによる、チェコ事件(「プラハの春」弾圧)の生々しいドキュメント。これらの写真は、去年観たチェコ関連の舞台(ストッパード脚本の『ロックンロール』)でも使われていました。旧共産…

「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」展

初台のオペラシティにあるアート・ギャラリーにて。前半はノスタルジックな作風で、後半はコンセプチュアル・アートに近づいているという印象を受けた。故郷をはなれて人工的な都市に住まう人々の拠り所のなさ、「宙づり感」みたいなものが、ホンマさんの写…

マンガ『ミラーボール・フラッシング・マジック』ほか

ミラーボール・フラッシング・マジック (Feelコミックス)作者: ヤマシタトモコ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2011/04/08メディア: コミック購入: 5人 クリック: 161回この商品を含むブログ (68件) を見るいま絶好調なヤマシタトモコの新刊。すばらしい。瞬…

マンガ『テルマエ・ロマエ』3巻

テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)作者: ヤマザキマリ出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2011/04/23メディア: コミック購入: 35人 クリック: 1,688回この商品を含むブログ (247件) を見る陰謀に巻き込まれつつもマイペースをくずさない、ルシ…

『話の終わり』

話の終わり作者: リディア・デイヴィス,岸本佐知子出版社/メーカー: 作品社発売日: 2010/11/30メディア: 単行本 クリック: 100回この商品を含むブログ (21件) を見る去年のオリオン書房でのイベントで、「ポール・オースターの(超イジワルな)最初の妻」と…

ETV特集「カズオ・イシグロをさがして」

長崎生まれ、海洋学者の父に連れられて5歳で渡英し、もっとも有名な「英語で書く日本人作家」となったカズオ・イシグロ。英文学ファンにとっては既におなじみの存在でしたが、映画『わたしを離さないで』の公開で、より広く知られるようになったのではないで…

『欲望という名の電車』

翻訳劇の名作を松尾スズキの演出で。主演のブランチは秋山菜津子さん。ところどころ杉村春子に影響されているのかな、と感じる場面もあった。ブランチは歌舞伎でいうなら「立女形」の格にあたる役なのだろう。女の心をもった男、として演じるほうがハマる………

『建築が生まれるとき』

建築が生まれるとき作者: 藤本壮介出版社/メーカー: 王国社発売日: 2010/08/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (9件) を見る著者は新進気鋭の建築家で、武蔵野美大の新しい図書館の設計者です。写真で見る内装はスリムでかっ…

幸田文『闘』

闘 (新潮文庫)作者: 幸田文出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1984/04メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見るこの1年くらいずっと翻訳文学に集中していたので、久しぶりに純・日本語な文章が読みたくなり、幸田文の未読の小説を手にと…

『トラウマ映画館』

トラウマ映画館作者: 町山智浩出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/03/25メディア: 単行本購入: 190人 クリック: 9,745回この商品を含むブログ (119件) を見る観た人を幸せな気分にする「名画」もいいけど、嘘くさく感じる時もある……。鬱屈した時期ほど暗い…

沈黙と饒舌のあいだ

地震後、また本の感想が書けるようになって、ああ、やっぱりプレッシャーだったのね、と気づきました。先月はじめて依頼原稿なるものを書いてみたのです。すごく好きな本の書評だったんだけど……。本当に好きなことを仕事でやるって、言い訳がきかない。書評…

『身体のいいなり』

身体のいいなり作者: 内澤旬子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2010/12/17メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 54回この商品を含むブログ (51件) を見る新聞の読書欄で見かけて即・予約を入れたのですが、図書館ではちっとも順番が回ってこない。めず…

『世に棲む患者』

世に棲む患者 中井久夫コレクション 1巻 (全4巻) (ちくま学芸文庫)作者: 中井久夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/03/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (20件) を見る全4巻の中井久夫コレクション、続刊も楽しみ。第1…

『セゾン文化は何を夢みた』

セゾン文化は何を夢みた作者: 永江朗出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2010/09/17メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 64回この商品を含むブログ (22件) を見るひとくちに「セゾン文化」と言っても、ジャンルは幅広いし、作り手・受け手として関わった…

『世界文学は面白い。』

世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周作者: 奥泉光,いとうせいこう出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/06/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 24回この商品を含むブログ (24件) を見るいとうせいこうと奥泉光が、世界の名作(薄い文庫本に限る)につ…

とりあえず前に

一日、自宅作業をすすめる。地震後ずっと続いていた、意識のピンとはりつめたような感じは、先週ごろから薄れてきた。 計画停電のある郊外地域と、23区内とでは、温度差みたいなものが出てきてる。都内だけでもそうなのだから、被災地とそれ以外の地域では、…

『わたしを離さないで』

映画館は密閉される感じでまだ怖いと思いつつも、楽しみにしていた新作なので、がんばって出かけた。原作はカズオ・イシグロ。淡々と流れるような語りのトーンが、映像でもうまく再現されていて引き込まれた。SFなのにアナログな雰囲気は『ガタカ』に似てる…