『欲望という名の電車』

翻訳劇の名作を松尾スズキの演出で。主演のブランチは秋山菜津子さん。ところどころ杉村春子に影響されているのかな、と感じる場面もあった。ブランチは歌舞伎でいうなら「立女形」の格にあたる役なのだろう。女の心をもった男、として演じるほうがハマる……。
秋山ブランチは、前半の場違いにまぎれ込んできた感じ、おどおどした芝居がよかっただけに、後半の「崩れ」はちょっと物足りなかった気もする。まあ狂気で落とす台本そのものが、現代の感覚ではもう古くなってるわけで……(初演は1949年)。秋山さんがまだ若くてキレイなので、それほど哀れがにじまない、というのもありますが。
期待していた池内くんのスタンリー、身体能力を活かし、存在感たっぷり。荒々しさと脆さの両面がくっきり出ていた。べそべそ泣いてる背中に、松尾さん本人がうっすら憑いてました……。演出家が自己投影しやすい役者なんだなあ、と思う。これからもどんどん大役に挑んでほしい。