『建築が生まれるとき』

建築が生まれるとき

建築が生まれるとき

著者は新進気鋭の建築家で、武蔵野美大の新しい図書館の設計者です。写真で見る内装はスリムでかっこよくて、ボルヘスの「バベルの図書館」に想を得て造られたものだとか。
文中に登場する「居場所」「弱い建築」「あいまいな建築」「ゆるやかなつながり」といったキーワードは、これからの時代の生き方にぴったりな気がして、同世代感覚というのでしょうか、共感できる点も多かったです。何かに所属し、何かを所有する生き方は、もう古い。大不況や災害に直面して、土地やモノにこだわる私たちはいかに無力であることか。ここ数年、つくづくと思い知りました。
箱(ハードウェア)ではなく、機能(ソフトウェア)でもない。世界と「つながり」を維持するためのモバイルでスマートな建築が、そうした柔軟でしなやかな生き方が、やがて主流となっていきますように。