『ウィニングチケット−遙かなるブダペスト』

サッカーくじで一山当てて大喜びの一家。だが、賞金を受け取ったその日にハンガリー動乱が勃発! 街から物資が消え、大金を手にしたものの価値は紙くず同然に……。甲斐性がなくてオロオロしてる小市民な主人公と、騒ぎにまぎれて脱獄してきた政治犯(実は詐欺師)の従弟の対比がおもしろい。従弟はコワイもの知らずで非常時にも強く、銃弾の飛び交う中でも食料を調達してきたり、口笛吹いて美女をくどいたりと、人生を謳歌している……が、その「怖れのなさ」のために、あっけなく凶弾にたおれる。
消えてしまった66万フォリントの賞金は、せっかく自由へのチャンスを手にしても、結局は無に帰してしまった当時の国内状況を風刺しているのかも……。前半、アパートの住民たちの生活が活写される辺りが、落語の「長屋モノ」っぽくて楽しい。