映画

『サヴァイヴィング・ライフ』

ヤン・シュヴァンクマイエル監督の新作は、シュールな切り絵アニメ(ときどき実写)で、夢の世界と現実を行き来する主人公の奇妙な「自分探し」がテーマになっている。ストーリーらしきものがあり、きちんと謎解きが進んでいくので、この監督の作品のなかで…

『エッセンシャル・キリング』

ポーランドの鬼才、イエジー・スコリモフスキ監督の最新作。荒漠とした谷間で3人のアメリカ兵を殺し、捕虜となったイスラム系の男が、移送中に雪山で事故にあい、からくも脱出。生き延びるためにひたすら逃げる、逃げる……。人間の業の深さや、飢えとの闘いな…

『ダンシング・チャップリン』

周防正行監督の新作。映画に触発されてローラン・プティが振り付けた作品を、ふたたび映画にする、という粋な企画。前半のドキュメンタリー部分が面白かった。後半はわりと舞台に忠実な映像化なのだけど、屋外に飛び出して撮影してあるパートは、やはり映画…

『わたしを離さないで』

映画館は密閉される感じでまだ怖いと思いつつも、楽しみにしていた新作なので、がんばって出かけた。原作はカズオ・イシグロ。淡々と流れるような語りのトーンが、映像でもうまく再現されていて引き込まれた。SFなのにアナログな雰囲気は『ガタカ』に似てる…

『GANTZ』

人気マンガを若手実力派(と言われてる)の共演で映画化。テンポのもたつきとか、アクションが見てて楽しめないとか、映画として欠点をあげればきりがないけど……(あ、ホラーっぽい前半は、けっこう怖いしエグくていい感じでした)。 さすが原作が売れてるだ…

『ソウル・キッチン』

ハンブルクの線路沿いでカフェを営む、うだつのあがらない青年のもとに、刑務所帰りの兄、腕はいいが偏屈なシェフがやってきて、客層ががらっと変わる。カフェの乱痴気騒ぎ(って死語かも)は盛りあがって楽しいし、笑える場面もあるけど、オチはけっこう乱…

『闇の列車、光の旅』

中南米の不法移民が、列車の屋根に乗って移動する姿が衝撃的。ストーリーラインや人物の書き込みは少し物足りないところもあるけど、若さと勢いを感じる映画だった。スリルあってよかった!アクション演出もキレがあって、もっと大がかりな作品でも映えそう…

『ソーシャル・ネットワーク』

フィンチャー監督の新作。つくりこんだ美しい場面は相変わらず多いけれど、隅々までコントロールしきれていない粗さも残り、逆にそこが胸をうつというか、見終わった後もじわじわ高揚感が続くような、ふしぎな感触を残す映画だった。 ザッカーバークはfacebo…

『ハング・オーバー!』

ベガスのホテルで目覚めたら、記憶をなくすほどのヒドイ二日酔い! で、部屋にはなぜか美女・トラ・赤ん坊が……という予告編からして、とても面白そうでした。テンポがよく、小ネタもすべらず、明るく笑えて楽しい映画だった。ていねいに伏線がちりばめられて…

『ヤギと男と男と壁と』

アメリカ軍に実在した(?!)超能力部隊のその後を描いたコメディ。わりと淡々とした演出で、期待してたより笑えませんでした……。ストーリーも弱い。俳優陣はわりと豪華で、ジェフ・ブリッジスが群を抜いてノリノリの怪演。ユアンもジョージ・クルーニーも喰わ…

『スプリング・フィーバー』

現代中国の南京を舞台に、ゲイの青年をめぐる男女の三角関係をオフビートで描いた(いかにもミニシアターらしい)青春映画でした。出てくる人たちみんな、色気があってよかった。職業俳優の洗練されて整った美しさとは違う種類の、生命力そのものが醸し出す…

『裏面』

恵比寿ガーデンシネマのポーランド映画祭で『裏面』を観た。ヒロインが女三代で同居してるハイミスの編集者なんで、これは観なきゃーと思って……。モノクロの過去(スターリン時代)と、カラーの現在が交錯する。ブラックユーモアにあふれた面白い映画だった…

『人生に乾杯!』

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『善き人のためのソナタ』

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『ソフィアの夜明け』

日本で公開されるのはめずらしい、ブルガリア映画の新作。父親がはでな女性(つまり資本主義?)と再婚し、居場所をなくした息子たちの姿を通して、旧共産圏の若者の現実が浮かびあがる。お先真っ暗というより、ほのかな希望を感じる。以前なら、青春映画は…

『かもめ食堂』

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『パイレーツ・ロック』

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『大奥』

よしながふみの傑作マンガの映画化。とても正統的なテレビ時代劇の延長みたいで、わりと安心して見ていられたのですが。原作を知ってると、随所でミスキャストが目についてしまう……。美術はすばらしかった。かちっとしすぎない(最近の流行らしい)着付けも…

『終着駅・トルストイ最後の旅』

悪妻で名高いトルストイ夫人をヘレン・ミレンが、時に毅然と、時に愛嬌たっぷりに演じている。まぶたを動かすタイミングまでが完璧だったよ……。ヤースナヤ・ポリャーナの調度の数々には、純ロシアっていうより微妙に英国文芸映画ふうの洗練を感じたのですが…

『リトアニアへの旅の追憶』

ジョナス・メカスの記録映画を見てきた。コンセプトは当時とても進んでいたと思うけど、今もアート的な価値があるのかは、わからない。現代のアート感覚に与えた影響は大きそう。ただ、私自身はメカスの自己憐憫くさい語調が少しニガテです。結局、自分だけ…

『フェアウェル さらば哀しみのスパイ』

クストリッツァが旧ソ連のフランスびいきなスパイ役を好演。おもったより芝居はおとなしめ(笑)。顔がよい。男の色気っていうか、自分の生き方を皮膚に刻んできたような、説得力がある。親子のきずなとか、モスクワ駐在フランス人との友情とか(お約束では…

『瞳の奥の秘密』

アルゼンチン発のミステリー映画。リタイアした検事が、20年前の事件を回想して小説に仕立てていく。どこまでが事実で、どこからが脚色なのか。過去と現在のストーリーが二重らせんみたいにからみあって進む。主人公の相棒のパブロさんがいい味出してた。映…

『悪夢探偵』シリーズ

インセプション、悪夢探偵と設定だけ似てるかも……。悪夢探偵 プレミアム・エディション [DVD]出版社/メーカー: ハピネット発売日: 2007/06/22メディア: DVD クリック: 13回この商品を含むブログ (44件) を見る他人の夢に潜ったり、心を読んだりできる超能力…

『インセプション』

ノーラン監督の新作。主人公は夢に潜る能力をもった産業スパイ、というSFぽい設定。記憶の階層がエレベーターで表されたり、意識のレベルを重層的に潜っていけたり……。映像で見ると、複雑な設定もわかりやすくなる。この映画、世界観が殺伐としていて画面が…

『ハゲタカ』

映画 ハゲタカ(2枚組) [DVD]出版社/メーカー: 東宝発売日: 2010/01/15メディア: DVD購入: 9人 クリック: 241回この商品を含むブログ (85件) を見る映画版では、中国から来た「ハゲタカ」……劉一華が登場。経済ネタはテレビ版より少なめ。後半は劉の正体をめぐ…

『ストーンズ・イン・エグザイル』

ABC翻訳教室の課題がストーンズだったので。バウスのレイトショーに行ってみました。これを見てから訳すべきだった……。税金逃れのフランス移住についてなど、ネットで調べ回らなくても一発でわかったのに。当事者たちの談話や、映像・写真、音源などもたっぷ…

『モルギアナ』

チェコセンターの映画鑑賞会、夏の納涼企画はゴス少女ホラー。父の遺産をめぐって、いじわるな姉と善良な妹が対決する。メイクと衣装がすごい! 厚化粧すぎて、なんかもう仮面とか歌舞伎の「隈取り」の域に達してる……そっかー、これってナマ人間を使った人形…

『ぼくのエリ 200歳の少女』

スウェーデンの吸血鬼映画。北欧の雪景色にはホラーがよく似合います。舞台となっている時代が少し古いこともあり、ノスタルジックな雰囲気でした。児童書やモダンホラーの映像化という感じ。怖さは今ひとつ……なんだけど、思わせぶりな演出は見ててけっこう…

『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』

久々にインディ系の邦画を観た。施設育ちの男の子ふたりと、人に愛されたい女の子の青春映画。ヒサンな境遇の人たちを、ものすごく淡々と映してる。現代の日本が舞台なのに、どこかファンタジーぽく見える。画面には必要な人物しか映り込まない、つまり最低…

『ザ・ウォーカー』

核戦争後に廃墟となったアメリカを、デンゼル・ワシントンが一冊の本を携えてひたすら歩く。ゴシックSFな世界観。凝りまくった映像がカッコよかったー。デンゼル様主演のPVみたい。ビジュアルが重々しく気取ってるだけに、話はちょっと単純(というかB級テイ…