国立劇場・十二月歌舞伎公演

「頼朝の死」は真山青果の作。前半はサスペンス仕立て?になっており、死の(トホホな)真相が次第に明らかになってゆく。二代将軍の頼家を吉右衛門が、言葉は悪いが「若作り」で演じているのだけど……若者の青臭く神経質な感じが出ていて、巧い!と思わず叫びたくなった。頼家の前に立ちはだかる母の北条政子を、富十郎が。お年のためかあまり動かないが、りんとした重厚なたたずまいはビシビシ空間に響いてきた。
舞踊「一休禅師」は、地獄と極楽の対比。「修善寺物語」は、岡本綺堂出世作明治44年初演。芥川龍之介の「地獄変」とも似たテーマなのだが、そちらは大正7年の作。この年には泉鏡花も「天守物語」を書いている。この三つ、なんだか関連性がある気がする。綺堂は歌舞伎の枠組みの中で、写実的な心理描写をおこなっていて……その手法が、後の芥川作品にも通じているように思われる。そして「鳥辺山心中」にも見られる唯美的な気質は、泉鏡花に受け継がれている。というような……。綺堂先生のお仕事は、大正期のモダニズムを育む苗床のひとつだったのかも、と想像しています。