『徴候・記憶・外傷』

徴候・記憶・外傷

徴候・記憶・外傷

徴候を読みとる機能=「微分」的、記憶を溜めこむ機能=「積分」的、という解説がとてもおもしろい。理系と文系の垣根が消える瞬間。こころで「微分」が機能しすぎてオーバーフローを起こすと、人間の「自己」を維持するシステムが失調する……。それが統合失調症の正体だなんて、すごい、おもしろい。
たぶん中世・近世辺りまでの過酷な環境では、ささいな徴候を読みとる能力は、人間が生きのびるための必需品のようなものだったのが、こんなに安全で手軽な世の中になると、そうした能力は「余って」しまい、持ち主を痛めつける素になるらしい。
……という感じで、この本は書いてあることがとても難しく、同時に刺激的でメチャメチャ面白く、しかも文章そのものは説き聞かせるように平明なので、読んでいるとすぐ眠くなってきてしまい、なかなか読み終わりませんでした。