『隣の病い』他

隣の病い (ちくま学芸文庫)

隣の病い (ちくま学芸文庫)

中井久夫さんのエッセイ集。サリヴァン統合失調症論、旅行記ギリシャ詩人解題など、話題は多岐に渡っている。再録の文章もちらほらある。「ハンガリーの旅」という旅行記がすばらしい。旅する者としての強烈な「眼」の存在を感じる。よけいな装飾の言葉や、大げさな演出はいっさいなく、旅の体験を語るクールな筆致にも心うたれた。
精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)

精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)

こちらは少しアカデミックな、精神医学についての話題が中心。自問自答の、対話の形式で書かれた文章が多くて読みやすかった。心的外傷からの回復の過程についてや、ちょっと謎めいたサリヴァンの評伝なども面白かった(たぶんゲイだったのだろう、と示唆されている)。