『だれのものでもないチェレ』

'76年のハンガリー映画をニュープリントで。孤児のチェレが、着る物すら与えられない悲惨な農場暮らしをどうにか抜け出したかと思うと、次は、魔女のように冷酷な女が支配する別の農場へ……。さらなる悪夢が襲いかかってくるのでした。帝国時代を抜けてもソ連の余波で共産化され、辛酸を味わい尽くしたハンガリー近現代史の縮図のよう。
農場の家畜が画面にたびたび登場する(そして悲鳴のような不気味な鳴き声を連発する)のだが、尊厳を奪われて生きる人間はけだもの以下では?とか、幼児を虐待する人間たちのほうがむしろけだもの?という痛烈な皮肉にも感じられます。