『セゾン文化は何を夢みた』

セゾン文化は何を夢みた

セゾン文化は何を夢みた

ひとくちに「セゾン文化」と言っても、ジャンルは幅広いし、作り手・受け手として関わった人数も多い。この本では、セゾン美術館とリブロ(本屋さん)に焦点があてられている。著者である永江さんの体験談や、当時の同僚や上司へのインタビューを通して、個人的な「セゾン文化」への思い入れが次々と語られ、しだいに核心のようなものが浮かびあがってくる構成。
そこには、都市生活者があこがれる何か、豊かで満ち足りた人生の「理想」や「夢」が投影されている。戦前のモダニズムから脈々と受け継がれてきた何か。(それはいつの時代も、暴力や我欲に踏みにじられて消えてしまいがち……)
かつて「セゾン文化」的と呼ばれたものは、アートや芸術といったラベルがはがれて、日々の生活に溶け込んできている。それが役目を終えた、ってことなのかな。