『人生の奇跡』

人生の奇跡 J・G・バラード自伝 (キイ・ライブラリー)

人生の奇跡 J・G・バラード自伝 (キイ・ライブラリー)

異色SF作家のJ.G.バラード自伝を一気読み。少年の眼がとらえた戦前の上海のようすが伝わってきて楽しかった。租界育ちで、英国に戻ってからもアウトサイダーであり続け、その独特な視点が、いっぷう変わったSF作品に結実していったことがわかる。……というか、バラードの作風そのものがジャンルSFの枠を大きくはみ出ていて、SF界でもずっと異端児あつかいされていたとか。
この自伝はガンの告知を受けてから書かれた、というのにも驚きました。すごい意志の強さ。著作は退廃的で暗いムードの作品が多いのに、バラード本人はとても明るく子煩悩で、生きることを全肯定している。人間的な魅力が伝わってくる一冊でした。