『1989 世界を変えた年』

1989 世界を変えた年

1989 世界を変えた年

ニューズウィークの記者が、1989年の東欧革命の舞台裏を回想。アメリカの外交政策の変遷も解説してある。歴史書というより、政治家列伝みたいで楽しく読めた。当時の東欧諸国のトップの実像が伝わってくる。
ハンガリー民主化に尽力した、ネーメトとポジュガイのコンビが格好いい。権力構造をひっくり返すには、信念にもとづいて行動すること。大胆な策ほど牙を隠して穏便に進め、時にはバクチも打たなくてはならないということを、学ばせていただいた……。
それにしても、スケールは違えど「権力者」って、どこの世界でも同じ傾向をもってるんだなー。潔癖性ぎみだとか、現実に目を向けず、人の意見にまったく耳をかさないとか。富の浪費のしかたも不毛だし。いきつくはては底なしの孤絶だ。ホーネッカーやチャウシェスクの描写には、ゾッとさせられるものがあった。
一方、共産党幹部の中にも、社会主義の破滅を見すえていた人たちがいて、この本にたびたび登場してくる東独のシャボフスキーさんは、人間くさくて親しみがもてる。ベルリンの壁が壊れて20年たち、おじいさんになった今もパソコンを使いこなして楽しんでいるらしい。いつまでも60年代の栄華にしがみつき、当時の音楽や自分の演説だけを街頭に流していたというチャウシェスクとは、対照的ではないですか?