『精霊たちの家』

マジックリアリズムのめくるめく文体が心地よい。20世紀のチリを舞台にした、女系家族の三代記。魔法や精霊がフツーに飛び交ってる序盤から、ものすごく毒に満ちた児童書のような雰囲気が楽しく、一気に物語世界に引き込まれます。因果応報な展開や、ピカレスクで強烈なキャラクターたちは、近世の歌舞伎狂言に近いものがあり、ワクワクしながら読み進めました。
後半は、チリの現代史の暗部にせまるような重苦しい場面も多かったけど……。ほろ苦くも楽天的なラストは、いかにもラテンアメリカらしい。人間性への信頼だとか、うっすらと希望も感じられ、読後感はさわやかでした。