家族の肖像

アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-12)

アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-12)

20世紀を代表するイタリアの女性作家ふたり。モランタの「アルトゥーロの島」、面白く読めたけど、本当はこういう話は好きではない。親にほったらかされて、自然児的に生きのびる少年の話……たとえば映画の「動くな、死ね、甦れ!」もそうだけど、かなり苦手なタイプです。
「モンテ・フェルモの丘の家」は、須賀敦子さんの名訳による。理性的で淡々とした筆致なのに、語られている事件はすごくドラマチック。ここに描かれる家族や恋人たちの関係は、伝統を否定して新しい形をめざしながらも、結局みんな孤独の中でバラバラに分解してゆく……というのが、とても面白かったです! オノ・ナツメの挿絵つきで読みたい感じだー。
実は「アルトゥーロの島」のモランタは、「軽蔑」を書いたモラヴィアと、なかなかにソーゼツな夫婦関係を続けた人だそうです。日本の作家でいうなら、岡本かの子ぽい存在? 野性味ある感性豊かな妻モランタと、都会の甘ったれ文士な夫モラヴィアの対比は、なんだか枡野浩一の『結婚失格』を連想させる組み合わせ。
結婚失格 (講談社文庫)

結婚失格 (講談社文庫)

町山さんの解説がどこでも絶賛されてる!