『昔話と日本人の心』

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫―学術)

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫―学術)

河合隼雄さんの初期の著作で、昔話に登場する女性たちを分析しながら、日本人の心性の本質に迫っています。『昔話の深層』の続編っぽく読める。このころの河合さんは、まだ読者との間に共通の用語やイメージを確立してないようで、いかに語るか、にも苦心されている様子が伝わってきます。論旨の展開もストーリーふうに工夫されてたりとか……。
重要な示唆がたくさん詰まっている本ですが、すみずみまで理解できたとはとても言えない。結婚や夫婦関係が大きなテーマとして取りあげられている。結婚してる人がみんなオトナになれる、というわけでもないでしょうが、人間の成熟にとって重要な試練であることは間違いない、という気もします。
とはいえ日本の社会は、あまり「成熟」を歓迎しない面もあるように思います。この本の後半でしきりと「将来的な日本人像」に、期待を寄せてあるのが印象的でした。現代の私たちに向けてのメッセージとも言えそうです。
昔話の深層

昔話の深層

こちらは西洋の昔話がいっぱい出てくる。やはり初期の著作で、面白いのだけど難解でした。