ウリツカヤ『通訳ダニエル・シュタイン』

通訳ダニエル・シュタイン(上) (新潮クレスト・ブックス)

通訳ダニエル・シュタイン(上) (新潮クレスト・ブックス)

通訳ダニエル・シュタイン(下) (新潮クレスト・ブックス)

通訳ダニエル・シュタイン(下) (新潮クレスト・ブックス)

現代ロシア文学の旗手・ウリツカヤの最新長編。20世紀の紛争は、国家や民族・宗教などの問題が複合的にからみあって起こったものだが、その根をたどってゆくと、人間同士の無理解(すなわちコミュニケーションの齟齬)が横たわっている……ということに気づかされる。
歴史の大きな歯車の中で起こるドラマは、人々の営むささやかな生活の中でも起こっているのだ。主人公のブラザー・ダニエルの人柄同様、とてもチャーミングな小説だった。