内田樹『私家版・ユダヤ文化論』

内田樹の『私家版・ユダヤ文化論』を読了。とにかく文章に勢いがあって、読みながらさまざまに触発される本だった。もとは講義録だそうで、ライブ感がある。論旨がでこぼこしたり、回り道したり、そんな中から、輪郭のない影のような……「ユダヤ的」という観念が、むくむくと立ちのぼってくるようで、ものすごく面白かった。
けして実現しない未来に起点をおいて、そこから遡るように時間軸を設定する。SFみたい。(『銀の三角』とか!)こういうふうに実存の不安を抱く「ユダヤ的」な人って、古い伝統(すでに変更不可な時間の連なり)にがんじがらめにされた集団を出自としてることが多いのでは?
私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)