E.M.フォースター『ハワーズ・エンド』

ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)

ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)

フォースターの『ハワーズ・エンド』、吉田健一の訳が(ちょっとクセはあるものの)ステキに面白くて、楽しめた。かなりアクロバティック(ご都合主義?)なストーリー展開も気にならないほど。
フォースターは『眺めのいい部屋』も大好きだったけど、ちくちくイヤミを言ってる文章が、少しわかりにくい。何をどう風刺しているのか、時代背景や英国人気質について知らないと、いまいちピンとこないというか……。
シェイクスピア芝居の早口台詞から、置いてきぼりをくらった時のような気分。
私はフォースターの文章を読んでいると、つい、淀川長治の顔が浮かんできてしまう。おちゃめな文体から、著者の人柄が伝わってくるよう。稚気にあふれていて、人情の機微に通じており、文化芸術に傾倒し、社会を俯瞰する視点をもちあわせた、愛すべき人。
彼がこの小説を書いたのと、ほとんど変わらない年齢で読むことができて、本当に幸せ。30代に入ると、人はあまり刺激を必要としなくなり、自分の内側に目を向ける。コトバよりモノに向かう……。真に創造性を獲得するためには、そういう時期が必要である、という箇所に、深く共感した。