『ブリキの太鼓』

ギュンター・グラスによる、奇怪な寓意にみちた長編小説。主な舞台であるバルト海沿岸の都市ダンツィヒは、現在はポーランド領グダンスクとなっている。主人公のオスカルは、父親がドイツ人なのかポーランド人なのかはっきりしない。所属のあいまいな都市そのものを象徴するような、ふしぎな語り手だ。ドイツだけでなく、東欧的な要素もたくさん散りばめられていて、SFっぽい雰囲気もあり、オスカルの皮肉で自嘲的な口ぶりが好みで、とても面白かった。
第一部のラスト、リフレインが効いている。太鼓の音が聞こえてきそうです。アクのつよいキャラクターが次々と出てくるのも楽しい。