『心的外傷と回復』

心的外傷と回復 〈増補版〉

心的外傷と回復 〈増補版〉

アメリカで広く読まれているトラウマとフェミニズム論の名著だそう。ヴェトナム従軍兵の後遺症や、政治的・民族的に弾圧されて拷問をうけた人たち、レイプや虐待の被害者などの実例がいろいろ登場し、たいへん暗くて重たい問題をはらんでいる……ので、読後ひきずられて気分が落ち込んだ。最終章は、基本的な信頼関係を回復することでトラウマからも回復していける、という明るい結びとなっているのですが。
この頃、マイケル・サンデルの『これからの正義の話をしよう』が話題となっていることもあり、邪悪と正義ということを考えている。私は長らく「権力こそ邪悪」と思っていたけど、そうでもないんだな……と、少し見方が変わってきた。(時代背景の変化もあると思いますが。)
この本の著者が示唆してくれるのは、社会から切り離される状態……孤独や孤絶こそ、邪悪の温床となるということ。それは貧困の発生について、湯浅誠さんが指摘していた問題と重なる。孤独は生存条件の「溜め」を奪っていく……。ささやかでも他の人たちと繋がり続けることで、沈んだ人もまた浮上するきっかけをつかめるのかもしれません。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

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反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

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